学生の頃、外国のマジックのレクチャーノートやトリックの解説書の翻訳のアルバイトをしたことがある。文章や数が限られたイラストでトリックを理解するのは、なかなかスムーズにいかない。翻訳作業は、トランプを片手に、著者の意図を読み解きながら翻訳を進める。
僕自身も、トリックの解説をときどき書く。翻訳するのも大変だったけど、ゼロから執筆するのも、また難しい。そんなときに解説の助けになるがイラストだけれど、イラストを描くというのもこれまた簡単ではない。
イラストを描くために、右手にエンピツを持ち、左手でトランプを持つ。ところが、この方法だと左手だけを描くときにはいいけれど、右手や両手の動作を描くときに困ってしまう。
コンピューターとデジタルカメラを使うようになってから、こういった作業は驚くほど簡単になった。
もっと簡単なのは、写真を使うことだけど、僕は写真を使った解説はあまり好きではない。写真のコントラストや階調が、印刷によって見づらくなることが多い。写真からイラストをおこすことによって陰影や色の数を減らしたほうが、読者にとっては考案者の意図した手の動きが理解しやすくなると思う。
情報量を減らすことにより、必要な情報のみをストレートに伝えること。手間をかけて、シンプルにすること。いまのところ、インターネットがどんなに普及しても、紙に印刷された活字が無くならないは、そんなことも理由の一つのような気がする。