「寒くなると、猫がフトンに入ってくる」という話を、ときどき聞く。うち愛猫のヒミツは、もともとノラだったから、そんなことはしない。
だから、日に日に涼しくなるたびに、寝る前に、僕は悔し紛れに
「つまんない、ネコだね」
と、ヒミツに文句をいう。そんなとき、ヒミツは僕の足元のコットン地のベットカバーの上に寝そべって、気だるそうに僕を見上げて眼を細めるだけ。
それでも、冬が近づくにしたがって、ヒミツは僕の頭に向かって、少しづつ移動してきているような気がする。9月の初めの頃は足首の辺りだったけれど、今はヒザぐらいの場所で寝るようになった。
僕は、これを桜前線のように「北上」と呼んでいる。(ベットは北枕ではないけれど、寝ている僕を日本列島に見立てれば、上(北)に移動しているように見えるから)
今のところ、予想図では12月末頃には僕の首のあたりに到達しそう。とりあえず、僕は、昼間はブラシをしたり、一緒に中庭に出たり、ヒミツの機嫌をとることにしている。