松田道弘さんの復刻本「クロースアップ・マジック」(ブッキング)が出版された。僕が、松田さんの著書「奇術のたのしみ」に出会ったのは10歳の頃。トリックもさることながら、マジックのバック・グランドに強く興味をひかれ、何度も読み返した。図書館にその本を借りに行くたびに、カウンターの人に「以前にその本は借りてますよ」と念をおされた。
「奇術のたのしみ」はトリックの解説というよりは、マジックの歴史やトリックにまつわるサイド・ストーリーを子供にもわかりやすく、写真やイラストを交えて解説した本。「ちくま少年図書 創造の広場」のシリーズの一冊として出版された。松田さん独自の視線で、映画、ミステリー、古典芸能といったマジックの世界にとどまらない資料も多く紹介されている。1975年に出版され、残念ながら現在は絶版になっている。
僕がやるような、近くで見せるマジックを、30年前のテレビなどでは「テーブルマジック」とか「フィンガーマジック」と呼んでいた。その頃に「クロースアップ・マジック」というタイトルの本を出した松田さんは、慧眼の持ち主だと思う。