「多いこと」は、良いことだと考えられていた時代があった。たとえば、ホテルなんかでも客室数が多いとか、何百人のバンケットに対応できる宴会場とかね。
そんな時代に、誰かが「いや、量より質じゃないの?」っていい始めて、人々も「そうかもね…」って、同意し始めた。
そんなわけで、一つでいろんなことが出来ることより、一つしか出来ないけど質の高いことが出来るよっていうモノや人が増えた。
ところが、「量より質」というキーワードは、「『量』は誰の目にでも判断できるけど、『質』の善し悪しは予備知識がないとわからない」という隠れた命題が含まれている。
というわけで、一部の人々は「じゃあ、『良質』って何なの」ってことで、自分たちのアンテナやセンスを磨き始めた。
特にアーティストは敏感だから、「これからは、これでしょ!」って、さまざま提案やイデオロギーを観る人に示す。そのアートの観客は、色々な反応を互いに感じながら感覚を研ぐ。
下の写真は、六本木ヒルズに設置された現代アート、夜見ると自分たちがモノクロ映画の中に取り込まれたようにも見えるし、意味のないデジタルな数字が、すべての森羅万象が10進法で表示できてしまう誤解に警鐘を鳴らしているようにも見える。
「少ないこと」は、アンテナの感度を高めている限りは「楽しいこと」だと、僕は思う。
ちなみにこれは、カラー写真。